春待つ秋田の風物詩、雪下で芽吹く新芽あさつき
『ひろっこ』は、毎年2月から3月にかけて、数メートルもの積雪の下から掘り出されるあさつきの若芽です。秋田県湯沢市相川地区を中心に半世紀以上栽培されている地域の特産品です。畑に植え付けたあさつきの種球が、積雪下の地熱によって萌芽してきたところを除雪して収穫します。春が待ち遠しい秋田に、季節の訪れを告げる味覚として伝統的に親しまれてきました。日の当たらない冷たい雪下で育つ間に蓄えられた糖分により、食味は甘く食感柔らかで、若いあさつきの香りが優しく繊細です。
この香りと食感を活かすため、火はさっと通す程度でどうぞ。産地の湯沢では、この『ひろっこ』をどっさり入れて、ハタハタやニシンなどと共にしょっつるで仕上げる鍋料理「貝焼き(かやき)」が昔ながらの郷土料理です。シンプルに酢味噌和え、お浸し、ぬた、かき揚げもお薦めです。色白で細身、よく曲がったものがより好まれます。
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【『ひろっこ』の語源】
小さいもの、良いものに「○○っ子」の愛称をつける秋田弁の特徴から、『ひろっこ』は、にんにくやネギ類の古語に”蒜(ひる)”から「小さい“蒜(ひる)”」「ひるっこ」〜『ひろっこ』と呼ばれたというのが通説です。
なお『ひろっこ』はノビル(野蒜)か、あさつきか、という議論が折節あります。現在流通しているものは基本的に栽培品のあさつきです。加えて地域では、自生のノビルも同様に雪下の新芽を収穫して食することもあります。
【鍋料理「貝焼き(かやき)」】
秋田県の”かやき”は、本来はホタテなどの貝殻を容器にし、時に貝からの出汁も利用する鍋料理一般を指しましたが、現在は貝鍋でなくさまざまな鍋料理の通称です。湯沢地域で『ひろっこ』を使用した”かやき”としてまず名が挙がるものに「カド貝焼き(ニシン)」「ハタハタ貝焼き」があります。