プルーンは糖度30度を超えたことがある腕前。
菊池幸徳さんのプルーンとりんご
標高800m超で日照時間の長い理想的な土地。
さらに、菊池さんのまじめな性格が果実に表れます。

菊池幸徳さんは、りんごとプルーンを栽培している長野県佐久穂町の生産者です。2022年に知り合い、それまで全く知らなかった「生プルーン」のあまりのおいしさに気づかせてくれた生産者です。プルーンと一緒に作っている、りんごも極めて素晴らしい腕前です。
果物は目安の糖度でいうと、みかんで12度、メロンで13度、マンゴーで15度、桃で12度。だいたいこの程度の糖度があれば美味しいと感じます。プルーンは糖度が高い品種は18〜20度程度出るのですが、菊池さんが作るものは25度以上が頻繁に出ます。
2024年10月12日撮影
全国シェア約7割の
プルーン生産量を誇る長野県
佐久地域は、日本で最初にプルーンの産地化が行われた地域です。

- 佐久穂町のプルーン
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大正10年に長野県農業事試験場 果樹試験地の設置に伴い、試作栽培されたのが始まりと言われています。
また、最初に産地形成が行われた臼田町の土屋喜八郎氏が昭和40年に日本スモモの台木に地元にあった西洋スモモの在来種を接ぎ、自家用として庭先や畑の隅に栽培したのが始まりです。
佐久穂町では、昭和43年に土屋喜八郎氏から佐久町の中島英明氏などへ苗木を分けてもらったことをきっかけに、プルーン栽培の素地が出来ていきました。
日本へは明治時代に伝わりましたが、なかなか定着しませんでした。 理由は、雨に弱く、成熟期に雨が多いと果実が裂果したり病気になりやすい性質があるからです。 現在では品種改良が進み、長野県をはじめ北海道、青森県などで栽培されています。
標高740〜1,300mの高冷地にある佐久穂町は、長野県の東部に位置し、西は北八ヶ岳や八千穂高原、東は茂来山や古谷渓谷、そして町の中心を南北に千曲川が流れる自然豊かな町です。
日照時間は年平均で約2,000時間と四季を通じて長く、雨は800〜900mmと少なく(全国平均で約1600mm)、昼夜の寒暖差が大きい内陸性気候により、糖度が高くギュッとしまった美味しい果物が育ちます。
昼夜の寒暖差が、植物を刺激して糖分を多く作らせ、水分や栄養とともに果実にギュッと凝縮します。標高1,000mを超える場所ではレタスなど高原野菜を中心に栽培されており、800m〜1,000mでは、特産品のりんご・プルーンなどが多く栽培されています。
生のプルーンは、産地化をしているところが極めて少ないため、多くの人はその美味しさを知りません。私も生プルーンの美味しさを初めて知りました
「りんごが一番好き!」という女性が目を丸くして驚く。
菊池さんが作るりんごは、どれも絶品です。




左上から右下に向かって順番に「すわっこ」「高徳」「おいらせ」「サンふじ」の品種です。どれも蜜入りが良い品種ですが、ここまでびっしり蜜が入る生産者も珍しいです。
初めて菊池さんのすわっこを撮影用に取り寄せた際、りんご好きの撮影補助に女性が「こんなにも香りが良くておいしいりんご、初めて食べた。販売するなら教えて。絶対買うから!」と明らかに驚いた様子でした。
菊池さんは全くの素人だった状態から、2008年にお父様から園地を引き継がざるを得なくなりました。当然ですが最初はうまく行かず、危機感を感じたそうです。しかし、菊池さんの真面目でマメな性格が助けとなり、今では誰もが驚く品質のりんごを作り上げる生産者です。
菊池さんとお話をしていると、危機感と好奇心をもって真面目に取り組むことの重要性を感じます。自分の農作物をお客様がどう感じるのかを知りたいからと各地のマルシェに出店し、要請があれば東京の大崎駅前まで出向きます。良い栽培方法があると聞けばすぐに取り入れる柔軟性を持ち、佐久穂町役場や他の生産者にも喜んで協力をする姿を見ていると、自分も菊池さんのように仕事に取り組まねばと、つくづく思います。
2024年9月にオープンした近隣の道の駅では、お客さんは当然として、販売スタッフからも菊池さんのりんご待ちが発生しているそうです。
標高800mをこえる園地。りんごは寒暖差で蜜入りが良く、着色も真っ赤です。

栽培では主に有機肥料を使い減農薬で栽培しています。様々なことを取り入れる方で、特徴的なところでは酵素を積極的に使っています。酵素は近年は人間の栄養素としても注目されていますが、まだまだどんなものかはっきりとわかっていません。
しかし、牧草に酵素を使っている牧場では明らかに牛のお乳の出が良くなったこと、高名な葡萄農家から「酵素を使うと強くて健康な木になる」との情報を知り、自身でも酵素の葉面散布を取り入れたそうです。実際に、落下しやすかったプルーンが落ちなくなるなど明らかに効果が出ました。
木が強くなれば、人間の免疫と一緒で病気に強くなります。自然と農薬も減らせるようになるので、今では酵素の力を信頼しているそうです。
「すわっこ」大人気でしたよ!「さしゃ」が美味しいです。
すぐ増やしてくれます(笑)

菊池さんは、須田治男さん(当店で扱ってます)と共同で苗木を作っています。2023年に「菊池さんのすわっこ大人気でしたよ!さしゃって品種が美味しいんです。」と伝えると、2024年にはすでに苗木を植えていました。それも結構な本数を増やしてます。軽い気持ちでおすすめしたので私はプレッシャーですが、そんなフットワークの軽さも菊池さんの魅力です。
順調に苗が育てば2028年か2029年に菊池さんの「さしゃ」が販売できる予定です。楽しみに待ちたいと思います。
文:(株)食文化 赤羽 冬彦