みかん栽培の常識を超えた新世代の生産者
宮崎県 鈴木亨さんの
完熟みかん

2022年の12月18日に送られてきた、鈴木亨さんのみかんに度肝を抜かれました。
「うわっ、旨い!」
美味しいみかんは食べなれているはずなのに、熟れた果肉と深いコクが素晴らしかったです。生産者の腕の良さを感じて、思わずうなりました。
鈴木さんのことは話には聞いていたので期待はしてましたが、聞けば聞くほどに噂が凄かったのですが期待以上でした。
・364日猛烈に働く男(1日は病院)
・深夜2時から夜10時まで働く
・ダイナマイトで山を吹っ飛ばそうと思ってる・・・
・体力がありすぎて異常
・一人でやれる仕事じゃない。毎日畑にいる
こんなことを同業の腕の良い生産者が口をそろえて言うのです。
2023年に、初めてお会いすることができました。
第一印象は「真っ黒」
見るからにワイルドな
鈴木亨さんです

鈴木果樹園の代表取締役 鈴木亨さんは、2016年に大学を卒業後、誰もがうらやむような会社に就職が決まっていましたが、お父様に請われて就農しました。初見の鈴木さんは写真で見るより「真っ黒」で、一瞬で毎日、畑にいる人だというのが良くわかりました。
見た目と違って、優しい話し方をする人でとてもギャップがあります。
ただし、やっている仕事は全くやさしくない。園地のみかんを、身を粉にして徹底的に管理する姿勢が凄くて、話を聞いているだけで感動してしまいました。
「そこまでやったら美味しいに決まっている」と思わずにはいられないほどでした。
先見の明をもつ、
お父様の確かな目
どん底の時代に、
みかんの園地を2倍にした

時代は2000年ごろ、バブルが崩壊して長引くデフレ。みかんの取引価格がどん底まで落ち込んだ、みかん冬の時代がありました。
そんな中で、亨さんのお父様が下した決断は、「園地を買って2倍にする」でした。
鈴木果樹園は、専業農家としても広い5haの広い園地をもっていましたが、それが10ha以上になりました。1農家で10ha以上など、日本でも数えるほどしかいないはずです。みかん以外にお米とすいかも大きな規模で栽培しているから驚きます。
そして、その園地の作り方が絶対に他では真似ができない方法なのです。
山だったところを切り崩して平らにして、広いみかん畑を管理するために造園しました。
土地を4メートル掘り、
土を全て入れ替える。
みかん栽培にベストな
土地を作る異次元の考え方

生産者は、自分の持っている土地を変えることは出来ません。
土地にあった栽培方法を見出すのが普通ですが、鈴木さんの園地は、みかんのために全てを作り変えた畑でした。
畑の中を車が往来できるように、5ヘクタールの園地全て4メートル掘り土を入れ替えたのです。下2メートルは金属を入れることで硬くします。その上2メートルは岩を砕いた石を敷き詰めています。みかんの木は水はけの良さが何より大切なので、水を吸わないように工夫しているのです。
多くの産地では、水はけがよいが作業が大変な山の急斜面に畑を作ったり、あるいはマルチシートを木の根元に敷くことで水を吸わないようにする工夫をしています。しかし作業性は落ちるので普通は広い園地を管理することは出来ません。
気合と根性!執着心が違う。
美味しいみかんを
作るためなら何でもやる。

今の時代、気合と根性とか、猛烈な長時間労働 などは、時代遅れだといわれる風潮があります。しかし、私を含めて多くの人にとって、眠る時間や自由な時間を削ってまで頑張る根性がないだけの話です。
「収穫するまでみかんを徹底的に管理する」その執念と根性たるや凄くて、何をやっても成功できるんじゃないかと思えるほど。
アミノ酸、カルシウム剤の散布は、4〜10月までで25回行います。
散布をやらない人は全くやらないし、1年間で4〜5回でも多いほうです。
葉を元気にするための葉面散布、果実の浮皮防止ためのカルシウム剤の散布は、美味しいみかんを作るために大切ですが、限られた時間の中で異次元の回数をこなすのが鈴木さん。雨が降らなければ、1日で30トンの水を灌水するそうです。美味しいみかんを作るために、手間暇を惜しまないのです。
12月は午前2時に起きて夜10時まで働く日(20時間)が4日あるそうで、もちろん休みなしです。2022年は、ハードワークが過ぎて倒れて気が付いたら病院のベッドだったそうです。
倒れたうえにあまりに真っ黒だから、奥さんが心配して検査をしてもらったところ、普通の人より肝臓が大きくて、むしろ健康だといわれたそうです。
何事もなかったように、また仕事に戻りました。
素晴らしく引き締まった
味の濃いみかん
地元でも絶大な人気です。

地元でも圧倒的な人気を誇る鈴木果樹園のみかん。地元の市場に、一度に3トン出荷しても全て高い価格で売れてしまうそうです。
大切にみかんを育て、常に高いレベルを維持しているため、信頼度が高いのです。
毎日6トン収穫するその規模にも驚きですが、そのほとんどを高いレベルで作り上げるところが鈴木亨さんのおそろしい所です。
2022年の園地全体の平均糖度が異次元に高い数字だったのですが、「彼ならやるかも」と思わせられます。
優秀な他の生産者のみかんをよく食べていて、とても研究熱心。
お客さんに対する姿勢も素晴らしくて、是非一度召し上がってほしいみかんです。
文章:赤羽 冬彦