愛媛県産 えひめ鯛

今回ご紹介するのは健康に育ち、旨味をたたえた「えひめ鯛」。ただの養殖鯛ではありません。世界初となる持続可能な養殖技術から生まれた新たな味覚です。
澄んだ見た目と弾力のある身質、しっかりとした旨味と程よい香りが特徴です。お刺身や丼ももちろん、湯引きやこぶ締め、炊き込んで鯛めしなどにもおすすめです。

愛媛県宇和海は、太平洋から黒潮が流れ込むことで、一年を通じて温かい海です。特有のリアス式海岸が波を打ち消し、海流は穏やかです。さらに、陸からは豊富なミネラルが流れ込むため、魚の養殖のためにこれ以上ない環境が整っています。愛媛県は60年にも及ぶ養殖の歴史があり、日本屈指の技術力を誇ります。魚類養殖の生産量は全国第1位です。
特に養殖鯛は全国のシェア50％以上を誇り、人工ふ化から育った鯛からさらに卵を取る完全養殖を実現しています。これは天然資源に頼らないサステナブルな産業です。
今や世に出回る鯛の8割以上が養殖。日本で出回る鯛の多くが愛媛県で生まれ育っているのです。（※愛媛県HP、農林水産省令和4年度資料より）

恵まれた環境と長い歴史が支えてきた愛媛県の養殖産業ですが、昨今、“飼料”に対する新たな課題が浮上しています。魚を養殖するには人間が飼料から栄養を与える必要があります。その原料は主に天然の魚肉や魚粉です。近年の海の環境変化や燃料高騰により、従来の方法では持続可能性が危ぶまれてきているのです。

こちらの写真に写っているものが、約3か月分の飼料となる原料魚です。イワシやサバなど様々な魚が原料としてストックされています。これだけの天然資源を使い養殖を実現しているということは、将来に向けた課題だといえます。
そこで、愛媛大学と（株）秀長水産が10年をかけて、海の資源に頼らない新しいたんぱく源を活用する方法を実現しました。

真鯛の養殖に昆虫由来のたんぱくを使うという試みは、世界でも初めてのことです。今回は飼料の1割をミールワームのたんぱくに置き換え、養殖に成功しました。2年の養殖期間を経て、ついに水揚げに至りました。水揚げされた「えひめ鯛」は健康的で旨味をしっかりとたたえ、脂のノリも十分です。

ミールワームは甲虫の一種で、たんぱくの生産効率が良く、様々な原料から育成が可能です。今後さらに天然資源の依存率を減らす挑戦が続きますが、この技術には業界の多くの人々が注目しています。

今回は骨取り・皮付きフィレでお届けします。 皮はひいてもいいですが、湯引きや炙りで鯛の旨味がより引き立つ調理法もおすすめです。焼きにも最適で、皮までパリパリに仕上げてお楽しみください。

持続可能性を目指した新しい養殖真鯛「えひめ鯛」にぜひご注目ください。

文責：八尾昌輝
監修：愛媛大学・（株）秀長水産
写真：八木澤 芳彦