こだわりは、味が乗るまでゆっくり育てること
栃木県 中里駿介さんが作る
「とちあいか」
2026年で就農して3シーズン目の中里駿介さん。前職はJAの職員ながら、資材の部門で働いていたため農作物を作るのは全くの素人だったそうです。農家になるきっかけは、後に自身の研修先となる、ある生産者のいちごを食べた際に美味しさに衝撃を受けたこと。一念発起して農業の世界に飛び込みました。
「自分も人の心を動かすいちごを作りたい。」そんな思いで作り上げたいちごは、独立した初年度から、全国いちご選手権で入賞を果たすほどの出来でした。その経験が今でも自信の源になっているそうです。
私(赤羽)が中里さんのいちごを知ったのは、豊洲市場で初めて見るパッケージの「とちあいか」を紹介されたことがきっかけです。味が素晴らしいので聞いてみたところ、2026年時点でまだ30代前半、就農して3年の生産者と聞いて驚きました。
2026/3/27 撮影
せっかく作るなら美味しい苺をつくりたい
中里さんが作る「とちあいか」は、とても甘くて果肉の質が良い。その理由は、いちごを味を乗せるためにゆっくり育てることを心がけているからです。
「とちあいか」は、多く実をつける品種です。シーズンを通しての反収(1,000m2あたりの収穫量)は、多い人で10トン〜12トンにもなります。ところが、中里さんの反収は、7トン程度しかありません。
ハウス内の気温を高くすれば、いちごはどんどん大きくなりますが、急いで育てると味が乗りません。春先になると苺が水っぽく味が薄くなるのはそのためです。
中里さんは、成長が早くなりすぎないように、暑すぎればハウスを開けて温度調整をしており、また春は光が入りすぎないようにハウスを二重にして遮光するなど工夫をしています。
勘違いのないように言うと、たくさん収穫することが悪いわけではありません。「とちあいか」は、ある程度たくさん作ってもそれなりに美味しい品種です。それなりに美味しくて、お手頃価格ないちごの方が世の中の需要は多いのですから、どちらを取るかは自分次第であるということです。
毎日、少しずつ手を加えることが大切。
2列のいちごの苗の間には灌水チューブが通っています。状況を見ながら毎日、10種類ほどの液肥と共に与えます。
自分の名前が入ったいちごだから美味しさにこだわりたい。
このあたりの土地は、周りは田んぼ。地下水が豊富で、10mも掘れば井戸水が出てきます。
春先、周りがハウスを締め切る中でも、開けて温度を下げます。ゆっくり育てて味を乗せるためです。
聞こえますか?
音楽を聴いて「いちご」は育ちます。
中里さんは、いちごにクラッシック音楽を聞かせていました。
「ミニトマトで賞を取った人がいて、その方のミニトマトが凄く美味しかったのです。トマトに音楽を聴かせていたというので、私も真似をしています。」
決して迷信だなどと侮れません。私もよく知らないながらも、ソルフェジオ周波数という言葉を聞いたことがありますし、同じ生物である以上、人間が心地よいものは植物にも当てはまる可能性が高いからです。
若さとはすばらしいものです。自分の苺が美味しくなると思えば、人の真似をしてすぐ取り入れるのですから。
美味しいものには理由があります。特に農業で腕の良い方はもれなく「土づくり」にこだわります。しかし、土の中にいる微生物の働きが植物にどう影響するのかがわかってきたのは、ここ40年ほどの話。つまり、科学、技術が進歩したといっても、私たちは知らないことの方が多いです。
それまでは、先人の経験・知恵により美味しくなる方法が伝わってきたのですから、何が正解かなどわからないと思う方が自然です。是非、中里さんには様々な人の経験・叡智を集めたオリジナルのいちごを作り上げることを期待しています。
(株)食文化 赤羽 冬彦











