「私たちの日常が誰かの非日常になるんです」
ヤマキイチ商店代表が語った
“三陸素材の素晴らしさ”
岩手県釜石市に構えるヤマキイチ商店は、代表取締役社長・君ヶ洞剛一の父が脱サラして立ち上げた会社で、今年で創業37年になります。
「老舗というにはまだまだかもしれない」と、君ヶ洞さんは控えめに語りますが、同時に“老舗のような心持ち”を大切にしてきました。急いで大きくなることより、一歩ずつ積み上げること。新規顧客より、まずは今いてくれるお客さんを大事にすること。その姿勢が、ホタテやウニなど三陸の素材を扱う会社としての軸になっています。
今回の水産庁プロジェクトでヤマキイチ商店が担ったのは、三陸ならではの三つの素材——ウニ、ホタテ、ホヤ。それぞれに理由がありますが、まず大きかったのは「次の柱のものを作っていく上で、やっぱりウニというものが非常にお客さんから引き合いが強い」という実感。生のウニは夏場にしか味わえませんが、加工によって“非日常の一品”として届けられます。
左よりうに味噌、塩うに、焼きうに
そのなかで同社は塩ウニ・味噌ウニ・焼きウニという三種類を選び、それぞれの魅力をどう表現するかに向き合ってきました。君ヶ洞さんは「基本的には、いい原料を使うことが当たり前なんですけど」と前置きした上で、原料の良さをどう調理で引き出すか、その一点にこだわったと語ります。素材の力を信じる姿勢が、企画参加の出発点といえます。
三つのウニ加工品のなかでも、特徴的なのが「味噌ウニ」。塩、焼きの食べ方は「ある程度、世の中でスタンダードな部分はある」と君ヶ洞さんは言いますが、味噌ウニには漁師町ならではの生活の記憶が息づいています。
「ウニは高価なものなので、家庭料理では味噌と卵を一緒に合わせて“増やす”ように食べていました」
単なるアレンジではなく、土地の食文化そのもの。この素朴な知恵が、現代の加工技術と合わさることで、ウニの新しい食べ方として立ち上がりました。「本物のウニよりもまた食べやすい部分もある」という言葉にあるように、特別な日だけでなく日常にも寄り添う味を目指した商品です。
もう一つの挑戦が「ホヤキムチ」です。殻付きホヤは5〜7月に販売され、向きたてをチルドや冷凍で届ける取り組みも続けてきました。しかし“もう一つの特徴を出したい”という思いから、加工品の検討が始まりました。「多分いくつか候補はあったと思うんですよ」と前置きしつつ、最終的に残ったのがホヤキムチです。レシピは「従業員さんそれぞれのいいものがあった」という社内の知恵を寄せ合い、塩分の微調整を繰り返しながら形にしたとのこと。
ホヤキムチ
ホヤは好き嫌いが分かれる素材です。君ヶ洞さん自身も「本当に美味しいと自覚したのは30過ぎてから」だと話します。それでもキムチにすることで食べやすさがぐっと増し、日本酒との相性もバツグン。“大人のアテ”として楽しむだけでなく、「お子さんも食べられるのでは」という広がりも見えてきました。「週末のご褒美に、お酒を飲みながらつまむ」——そんなシーンを思い描きながら完成した商品です。
ホタテについて語るとき、君ヶ洞さんの言葉は一段と熱を帯びます。「最初は刺しで食べていただきたい」。その理由は何より鮮度。スーパーでは横切りが多い貝柱も、鮮度が良いものは“縦切り”が正解だと言います。「極端に言うと、ちぎって食べてもいいくらい」。繊維が立ち、甘みと歯ごたえが際立つからで、現地を訪れた人ほどその衝撃に驚きを見せます。
同社の看板商品でもある「泳ぐホタテ」が注目された背景には、品質への手応えがあります。「ホタテの概念が変わりました」「人生で一番おいしい」——こうした声を受け取るたびに、自分たちが当たり前に食べてきた味の価値を再確認します。
しかし、素材を扱う現場は常に安定しているわけではありません。「毎年毎年厳しくなってきてて」と君ヶ洞さんは率直に語ります。黒潮の大蛇行は8年ほど続き、本来獲れないはずの伊勢海老が東北に上がったり、鮭が不良になったりと、10年前には考えられなかった変化が起きています。ホタテも例外ではなく、大きい規格ほど年々希少になっているようです。
それでも「今年は旬の時期に冷凍商品を去年より多めにできた」と前向きに捉えています。貝殻が小さくても、中身が良ければ最大限活かす。それが産地の現実と向き合いながら続けてきた姿勢です。
「岩手のホタテってクオリティ高いな、と再認識しました」
他の産地を見ることで気づく、自分たちの海の力。その気づきも、この厳しい状況がもたらしたものでしょう。
ウニ、ホタテ、ホヤ——三陸の素材をどう届けるかを問い続けてきたヤマキイチ商店。君ヶ洞さんの言葉のなかで最も印象的なのは、「私たちの日常が、誰かの非日常になる」という一言です。驚きや感動の声は、同社にとって“仕事を続ける理由”そのものになっています。変わりゆく海の現実と向き合いながら、それでも素材の力を信じ、丁寧に届けていく——今回の水産庁プロジェクトで生まれた三つの商品には、そんな静かな意志が確かに宿っています。
複数の配達期間が選べます
12/23出荷 ヤマキイチ商店 『三陸産 キタムラサキ雲丹 三味食べ比べ』 焼雲丹80g+塩雲丹80g+雲丹味噌100g 化粧箱入 ※冷凍 【uoya】
11,880円(送料・税込)
- 販売中 在庫数 4
- 有限会社ヤマキイチ商店











