秋田三種町 じゅんさい鍋
白神山地と房住山の豊かな水が育む
森岳じゅんさい
日本一の森岳じゅんさいは
『美しいぷるぷる』
に包まれた極上品
清らかで豊かな水でしか生きることができない “じゅんさい”は、実にその96%以上が水です。生活排水や農薬・除草剤などが生息沼に流入するとじゅんさいは枯れてしまいます。まさに、じゅんさいは水資源と流域の環境バロメーターです。じゅんさいの古名は『蓴』(ぬなわ=沼縄と読む)。古くから食用にされ、万葉集や古事記にも登場しますが、日本各地の環境悪化により、今ではほとんど生育地が無くなってしまいました。秋田県三種町の森岳は、日本のじゅんさいの約5割を産する『じゅんさいの町』。5割という値。それは如何に森岳の水と周辺環境が良いかの証でもあります。
じゅんさいの収穫は厳しい労働
じゅんさいの収穫は夏場の早朝から夕方4時くらいまで。ほとんど休みなく、女性達はじゅんさいの摘み取りに集中します。葉が大きくなり過ぎると価値が落ちてしまうので、この時期の収穫作業は時間との勝負です。船が小さいので、大柄な秋田の男性が乗るのはむいていません。多い人は1日で40kgものじゅんさいを摘むので、下手をすると自重で沈没しかねません。高級な料理屋で珍重される 『じゅんさい』 は、先のTの字部分です。収穫は成長先端のTの字部分から少し下の葉まで採るので、高級品や瓶詰めの加工品はこの先部分を手間かけて切り出し、選別します。この作業も女性達の独壇場です。
地元の森岳ではじゅんさいを
鍋で食す
無選別のじゅんさいは鍋に最高!
料理屋でじゅんさいと言えば、小さなじゅんさいが数個入った酢の物で、高価なイメージですが、産地の森岳では違います。大量のじゅんさいを何と鍋にして食べます。じゅんさいを覆うヌルヌルのゼリー状の正体は多糖類(ガラクトース、グルクロン酸、フコース、マンノースなど)。また、じゅんさい100gは11カロリーと低カロリーなので、食べ過ぎても心配ないです。
出汁の主役は“比内地鶏”
非常に上質な脂と赤身の濃厚な味が魅力の比内地鶏。そのがらで取ったスープがじゅんさいを生かしてくれます。もちろん、お肉も比内地鶏。特に内臓類からは濃厚な味が染み出します。 今回の比内地鶏は八郎潟の干拓地で放し飼いで育てられた、正真正銘の比内地鶏です。出荷までに費やす時間は180日。普通の鶏の3倍、多くの銘柄鶏と比較しても、2倍近い長さです。こうして手間ひま掛けて育った比内地鶏は他の鶏肉とは一線を画す味わいになります。
じゅんさいは最後に
それも火を通しすぎない!
さっと水洗いするだけです。洗いすぎるとせっかくの『ぷるぷる』が取れてしまいます。スープを張り、沸騰したら比内地鶏を入れ、再度沸騰したら、みずやセリなどの山菜を入れます。山菜に火が通ったら、最後に主役のじゅんさいです。一度に全部を入れるのではなく、食べる分だけを入れ、軽く温まれば食べごろです。絶対に煮込んでは駄目です。初夏から夏にかけては、『森岳じゅんさい鍋』で暑気払い。冬は雪深い秋田の保存食として、からだが暖まる具材とともに鍋にして食す。そんな季節の定番にしたいです。鍋の素材がシンプルに絡み合い、意外な驚きの美味になります。最後の汁の1滴まで堪能できます。